こんにちは、New Commerce Ventures松山です。
4月1日より2024年問題と呼ばれる運送業における時間外労働の上限規制が開始されました。今回はこの2024年問題に対する政府や企業の取り組みをまとめました。
物流の2024年問題は、2019年4月に施行された働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が、2024年4月から運送業にも適用されることにより、従来の輸送能力が大きく減少する問題です。
年間の時間外労働は960時間に制限され、1日の労働時間は最大16時間から15時間(14時間超は週2回まで)、1日の休憩時間は継続して最低8時間以上から9時間以上となり、これまで1人のドライバーが運んでいた長距離輸送が不可能となります。2024年度には、輸送能力の14.3%、2030年度には34.1%が不足すると試算されています。
この問題に対して、内閣官房及び経済産業省・農林水産省・国土交通省は、2023年6月「物流革新に向けた政策パッケージ」を発表、同年10月にはさらに具体的な施策へと落とし込んだ「物流革新緊急パッケージ」を発表、荷主事業者・物流事業者に対する業務の改善要請を行いました。
具体的には、以下発表資料となりますが、対策の大きな柱は「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」の3つです。
1.商慣行の見直し
荷主に対しての荷待ちや荷役時間の短縮に向けた計画作成の義務付け、その計画を策定する「物流管理統括者」の設置の義務付け等がまとめられています。荷主事業者は、荷待ち・荷役作業等にかかる時間を計2時間以内(目標1時間以内)とすることが求められており、国土交通省は2023年11月より全国に「トラックGメン」を配置、荷主と運送業者の取引監視を行っています。
2.物流の効率化
物流施設の自動化・機械化や自動運転トラックの導入などによる物流DX、トラックでの運送から、より多くの貨物を一度に運べる鉄道や船舶に移行するモーダルシフト、共同輸送の促進等を要請しています。
2024年4月からは、大型トラックの高速道路での最高速度を時速80キロから90キロに引き上げが開始されています。また、2023年11月には、10年後の実装を目指し、主要都市を結ぶ高速道路の中央分離帯に自動運転カート用のいレーンを設置、効率化を目指す計画が発表されています。
3.荷主・消費者の行動変容
宅配の再配達削減を目指すための店頭受取・置き配指定によるポイント還元が挙げられています。再配達率を現状の12%から24年度には6%へと半減させる目標を掲げており、EC事業者に対する送料無料表示の変更要請、宅配ボックスの設置費用の補助等が進められています。
これらに対して、小売・物流企業も様々な業務改革を進めています。
スーパー大手のイオンは、Commercial Japan Partnership Technologiesと提携により、AIによる最適ルート計算を用いた配送車両数の削減、朝便・昼便の廃止による積載率の向上、共同配送やモーダルシフトの促進をはじめ、複数の改善案を発表しています。
西友は、トライアルや西鉄ストアをはじめ、メーカー・小売・卸売・物流領域の15社とトラックを共有する実証実験を開始、メーカーから西友の物流拠点まで商品を配送した後、メーカーのトラックを使って店舗への配送、トラックの積載率を50%から100%へと近づけると発表しています。
セブンイレブンは、2023年9月末より、常温商品の当日配送を翌日配送へ切り替え、ドライバーの業務量削減を発表しています。この他にもファミリーマートとコカ・コーラボトラーズジャパンや日清食品とJA全農、アサヒグループジャパンと日本通運による共同輸送等各社が配送効率を高める取り組みを推進しています。
また、物流領域では、2024年4月1日よりヤマト運輸と佐川急便が宅配便の料金を引き上げを行っています。また、ヤマト運輸は、メール便を日本郵便に委託して宅配便へ集中、セイノーと日本郵便は、幹線輸送の共同運行の実証実験を行っています。
先週は東京都が国交省・経産省、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便、アマゾンジャパン、楽天、LINE ヤフーと連携した再配達削減等の物流効率化に向けたプロジェクト「東京物流ビズ」を発表し、物流事業者の人材確保・設備投資の支援、モーダルシフトの支援、宅配ボックス設置支援、再配達削減キャンペーン活動等を発表しました。
再配達削減では、Yahoo!ショッピングが買い物時に置き配を指定すると、10ポイントのPayPayポイントが付与されるキャンペーンを実施しています。同じく、ZOZOは商品注文日の5日後から10日後までに発送する「ゆっくり配送」を選択した場合に10ポイントのZOZOポイントが付与される取り組みの試験導入を発表しました。
大手企業だけでなく、2024年問題を解決するスタートアップも多く存在します。Hacobuは、荷待ち・荷役作業時間を削減するバース予約システムを中心に配送業務の効率化ソリューションを提供しています。
同じく207は配送員の業務効率化の切り口から配送業務の効率化を図っています。また、配送ルートの最適化アルゴリズムを提供するオプティマインドや中継輸送のマッチングを目指すスペース、配車・共同配送の最適化を目指すログポースなど様々な切り口で2024年問題を解決するスタートアップが存在します。
New Commerce Venturesとしても小売・流通を支える物流の課題を解決するスタートアップを支援していきたいと考えています。特に大手同士の連携が進む大手に比べ、中小規模の運送会社は、従来の業務量を請け負うことができず、深刻な課題となっていると感じます。今後この領域に挑戦する方がいれば是非ご連絡ください!
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