1週間のコマース領域の注目ニュースとスタートアップを紹介します。
返品・配送追跡等の購入後体験ソリューションを提供するNarvarは、配送コストの高騰に伴い、小売事業者の送料無料の平均最低注文金額は、2019年の52USDから64USDへと上昇しているとの調査結果を発表しました。
この調査は、48社の小売事業者をサンプルとした調査で、送料無料の最低注文金額を値上げした企業にはMacy’sやAbercrombie & Fitch等が含まれています。
Amazonは、昨年配送コストの上昇により、Amazon Primeの会員料金を年額119USDから139USDへ値上げしており、配送負荷の増加に 伴い、同様の値上げが波及していくと考えられます。
国内でも経済産業省、農林水産省、国土交通省による2024年問題に対する政策パッケージの一つとして、EC事業者に対する送料無料表示の変更要請が議論されており、送料無料の最低注文金額の値上げ、さらに送料無料自体やその表現の変更が国内でも加速していく見通しです。
BNPL(後払い決済)大手のAffirmは、2021年に買収した返品管理ソリューション「Returnly」を売却すると発表しました。
Affirmは、2021年6月に3億USDでReturnlyを買収、同社のBNPLサービス利用者に対して返品・返金をスムーズに実現できるよう連携を行ってきました。今後は、同じく返品管理ソリューションを提供するLoopと戦略的提携を締結、2023年10月までにReturnlyの加盟店に対してLoopに移行するよう促していくそうです。
現在Loopの加盟店数は約2,200店、Returnlyの加盟店数は約1,500店となっており、Loopの成長が期待されます。
一方で直近Affirmは、売上成長率の鈍化に対して営業損失が拡大、今年2月には500人規模のレイオフを行っています。黒字化のため、今回の返品管理事業の見直しを図っていると考えられますが、コストカットと同時に従来の高い売上成長率を復活できるかが注目されています。
セイノーホールディングスとSpiral Innovation Partnersは、現在運営中の物流領域特化ファンド「Logistics Innovation Fund」の2号ファンドとして、「Value Chain Innovation Fund」を70億円で設立したことを発表しました。
Logistics Innovation Fundは、物流業界全体のバージョンアップと課題解決を目的として設立から現在までに、Openlogi、Hacobu、ミナカラ、Shippio、207、Azit、ROMS等スタートアップ16社へ投資、5件のファンド出資を行い、多くの協業事例を創出してきたそうです。
一方で2024年問題が叫ばれる中で”物流領域”のスタートアップとの取り組みのみでは、業界全体の課題を解決できないのではないかという問題意識から、今回新たにValue Chain Innovation Fundを設立、物流領域を中心としつつも、その川上・川下にも投資領域を拡大し、荷主企業様のバリューチェーン全体への価値提供を目指していくそうです。
今後の物流のあり方は、小売・流通領域特化のNew Commerce Venturesとしても解決を目指す大きな課題の一つと認識しており、様々な企業との連携により課題解決へ貢献していきたいと考えています。
参考記事:https://www.seino.co.jp/seino/news/shd/2023/0711-01.htm
設立年:2013年
国:米国
直近調達:30Mドル/23年7月/Series A/
累計調達金額:90Mドル
主要投資家:Y Combinator, NTT DoCoMo, NTT DOCOMO Ventures, Colle Capital Partners, Sound Ventures
会社HP:https://goradar.com
事業概要(2023年7月 調達時点):
-店舗/倉庫内の在庫位置把握ソリューション
-RFIDとコンピュータビジョンを用いることで実現
-店舗におけるリアルタイム在庫管理(EC の店舗出荷に応用可能)や無人決済ソリューションに応用可能
-天井にセンサー・カメラを設置することでピンポイントでの位置把握が可能
-アメリカンイーグル500店舗での導入予定。他大手小売2社でのPoC中
調達ニュース:https://www.finsmes.com/2023/07/radar-raises-30m-in-series-a-funding.html
設立年:2018年
国:米国
直近調達:100Mドル/23年7月/Debt Financing/
累計調達金額:169Mドル
主要投資家:First Citizens Bank, Andreessen Horowitz, Tribe Capital, Initialized Capital, Garry Tan
会社HP:https://usesilo.com
事業概要(2023年7月 調達時点):
-農産物業界のERP・ファイナンス支援
-仕入、販売、在庫・輸送、会計、支払いをワンストプシステムで管理可能
-データの構造化、不正検知、商品分類など随所でAIを活用
-可視化により利益改善、効率化が可能
-ファイナンス支援であるRBF「「Cash Advance」、早期入金サービス「Instant Pay」も提供
-RBF用に今回銀行から$100Mを融資で調達
-2022年12月から2倍に成長し数千万ドルの売上規模に
-$27Bに及ぶ食品サプラチェーン領域にはPando、Prewaveといった競合が存在
設立年:2022年
国:米国
直近調達:6Mドル/23年7月/Seed/
累計調達金額:6Mドル
主要投資家:Craig Ramsey, Young Sohn, Mark Armenante, Matt Wallach, James Ramsey
会社HP:https://www.revolear.com/
事業概要(2023年7月 調達時点):
-BtoB取引の最適化支援SaaS
-大型の商談案件は関係部署の多様化、ステークホルダーの多様化により意思決定が複雑化している
-revolearは案件を360度で可視化(法務、会計、運用、売上・利益)
-案件情報が各部署にリアルタイム連携され意思決定をスピード化
-generative AIをフル活用(予測、価格、交渉の最適化、ドキュメンテーション、ワークフローの自動化)
-negotiation as a service領域ではPACTUM、Nibble、BATNAなどが存在
-現在クローズド版の提供中
-創業者は当該領域で25年の経験を持つsalesforce,vlociyの元幹部
調達ニュース:https://www.revolear.com/blog/revolear-announces-6m-in-seed-financing
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