こんにちは、New Commerce Ventures 松山です。
今回のコラムでは、少子高齢化により益々深刻化する人手不足を補うコマース・リテール領域のスタートアップを紹介します。
日本の人口は1億2399万人(2024年2月1日現在)、出生率は減少を続け2023年の出生数は75.8万人(前年比5.1%減)と過去最少を記録、少子高齢化が進み、2050年には1億468万人になると推計されています。
※国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
特に東京一極集中の流れは加速する見通しとなっており、地方では従来の生活を持続することは困難になっていくと考えられます。
その兆しは既に見え始めています。地域のスーパーマーケットでは、従来の店舗運営を維持できず、撤退や統合により、近隣で買い物できない「買い物難民」が生まれています。宿泊施設では、空き部屋はあるもののスタッフが不足しているため、予約数を制限しているという声も多く聞きます。
このような人手不足を解決するためのソリューションも多く存在します。人手不足の解決の方向性は、大きく2つに分類されます。一つ目は自動化・省人化による業務効率化です。二つ目は従業員の生産性を高める従業員エンパワーメントです。
この領域は、従来人間が行っていた業務をテクノロジーにより省人化・自動化することで、人手不足の課題解決に貢献しています。
自動化・省人化の代表格は、日常生活にも浸透している無人レジ(セルフチェックアウトレジ)ではないでしょうか?
多くのコンビニやスーパーで利用されている無人レジに加え、トライアルは買い物カートを用いた無人決済のシステムを提供しています。事前にクレジットカードを登録、買い物カートに商品をスキャンするだけで決済を完結することができます。
また、Amazonが開発するJust Walk Outは、入店時に顧客のAmazonIDを取得、コンピュータービジョンを通じて顧客が手に取った商品を特定し、退店時にAmazonIDで自動決済される無人レジシステムを提供しています。国内ではTOUCH TO GOが同じくコンピュータービジョンや重量センサーを用いて、買い物した商品を特定、出口でキャッシュレス決済をして退店できる無人店舗支援システムを提供しています。
また、ファミレスでは見かけることも多くなった配膳ロボットですが、小売領域でもロボットの活用が進んでいます。
ファミリーマートでは、Telexistence社のロボットを用いて飲料品の陳列を自動化したり、宣伝用モニターと商品棚を搭載した清掃ロボットの導入を始めています。将来的には、このロボットが商品棚をスキャンすることで、商品補充をアラートする等の機能も構想しているそうです。
スタートアップでは、MUSEがスーパーやドラッグストア等での商品の搬送、商品棚のスキャンによる陳列状況や欠品状況の可視化等を行えるマルチユース型ロボットの開発を進めています。
その他にも大規模店舗の接客を効率化するリモート接客ソリューションを提供するタイムリープやリモート接客をリアルの人物ではなくアバターに置き換えているているkiwami、店内や倉庫内の在庫位置情報をリアルタイムで把握できるサービスを提供しているRADARのように様々な店舗での作業を効率化する様々なソリューションが生まれています。
従業員エンパワーメントは、様々な手法により従業員の生産性を高めるソリューションです。福利厚生や金銭的なインセンティブにより従業員満足度を高め間接的に生産性を高める手段、人材教育やアシスタントツールにより直接的に生産性を高める手段も含みます。
特に人手不足の環境下において、離職防止・採用強化に繋がる従業員満足度の向上は、今後益々重要性が増してくると考えています。
STAFF STARTは、販売スタッフが自社サイトやSNSに自社商品を紹介するコンテンツを投稿すると、その投稿を経由して生まれた売上に応じて、販売スタッフが評価される仕組みを提供しており、従業員満足度の向上による間接的な生産性向上と直接的な生産性向上を組み合わせたソリューションとして秀逸です。
この流れは、海外でも進んでおり、Walmartは、Brand Networks社と連携して、店舗スタッフが自社商品を紹介するコンテンツをSNSで投稿、本部が承認〜管理し、成果に応じてインセンティブを提供する仕組みを導入しています。
同じく金銭的なインセンティブにより従業員満足度を高めつつ、小売事業者とブランド事業者を繋ぐ新たなサービスも生まれています。
SparkPlugは、販売スタッフ個人単位の販売実績を集計、リアルタイムで閲覧できるシステムを提供しています。このシステム上では、目標達成に応じて報酬を得られるプログラム、販売実績ランキングの上位者に報酬を提供するプログラム、特定商品の販売に応じて報酬を提供するプログラム等を作成することができます。これにより金銭的なインセンティブやスタッフ間での競争意欲を生み出し、生産性を高める仕組みとなっています。
同じく飲食業界では、Axial Shiftが、接客スタッフがそれぞれの売上高、チップ、シフトなどをリアルタイムで閲覧できるサービスを提供しており、他スタッフや他店舗の実績を見ながらゲーム感覚で競争することを促しています。
SparkPlugの興味深い点は、この従業員エンパワーメントプログラムをブランドにも開放していることです。ブランドは、SparkPlugを通じて、自社商品の販売実績に応じて報酬を支払うプログラムを提供することができます。ブランドは従来リベート等により間接的に店舗での販売促進を行っていましたが、このプログラムを活用することで、直接的に小売現場のスタッフへ販売促進を働きかけることができます。
第三者の予算を活用して、従業員の満足度を高め、生産性を高める仕組みとなっており、サービスとしてもビジネスモデルとしても面白い事業となっています。
日本と海外では商習慣や文化が異なる点もありますが、販売スタッフの役割は従来の接客や裏方業務だけでなく、積極的にリアルとオンライン上で販売促進をしていく宣伝塔的な役割を担っていくのかもしれません。
世界に先行して少子高齢化社会に直面する日本において、このような新たなソリューションは世界へと拡大するポテンシャルを秘めていると感じます。
もしこの領域でチャレンジする起業家の方がいましたら、ぜひディスカッションさせてください!X(Twitter)のDMにてご連絡いただけると嬉しいです!
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