マーケティング×生成AIスタートアップ　３つの参入角度

生成AI関連の調達は2024年に入っても勢いが続いています。
今回は、直近調達した事例の中からマーケティング×コマース領域における3つの参入角度の事例について切り口別にスタートアップをご紹介いたします。
具体的には、
パターン１：マーケティング、顧客コミュニケーション中心
パターン２：マーケティングとクリエイティブ生成の連動に特徴
パターン３：クリエイティブ生成中心
の３つです。

　パターン1においては、「Arcane Intelligence」、「Birdseye」、「Connectly.ai」を紹介します。「Arcane Intelligence」はマーケターの仕事のうち、広告最適化からSEO対策、競合分析などの広範な業務をAIで自動化/効率化することを強みにしています。

マーケター向けのAI co-pilotを提供「Arcane Intelligence」

設立年：2021年
国：英国
直近調達：5Mドル/23年12月/Seed/
累計調達金額：6Mドル
主要投資家：Anthony Yazbeck, Connor Hayes, Kima Ventures, Accel, Seedcamp
会社HP：https://tryarcane.com/

事業概要:
・マーケター向けのAI co-pilotを提供
・日々の業務(レポート作成、顧客分析)を自動化
・リアルタイム分析による次の施策の提案
・データは全チャネル/コンテンツを統合管理(各チャネルのキャンペーン毎、コンテンツ毎の比較分析が可能)
・100以上の業務自動化メニュー(広告最適化や競合広告分析など)を用意

調達ニュース(2023年12月 調達時点)
https://www.finsmes.com/2023/12/arcane-raises-5m-in-seed-funding.html

「Birdseye」はよりECに特化することで顧客の購買情報や自社の在庫状況に応じて広告運用/CRMを支援するプロダクトを提供しています。

EC特化マーケ支援SaaS「Birdseye」

設立年：2021年
国：カナダ
直近調達：3Mドル/23年11月/Seed/
累計調達金額：4Mドル
主要投資家：Drive Capital
会社HP：http://www.birdseyeglobal.com

事業概要:
・ブランド/小売向けマーケ支援SaaS
・Shopifyユーザー、専属のマーケ担当が不在のスモールチームに強み
・AI-CMO(chief marketing officer)を目指す
・広告運用・CRMを商品ごと、顧客ごとにパーソナライズ可能（LLM活用）
・例）26cmの黄色いスニーカーが在庫100個あった時に、条件に当てはまる顧客へのメールや需要予測を加味した割引率や露出の強化度合いを提案
・120の顧客、年初の売上2倍

調達ニュース(2023年11月 調達時点)
https://techcrunch.com/2023/11/22/birdseye-ai-chief-marketing-officer-retail/

「Connectly.ai」は各種SNSやWebチャット等の複数チャネルを横断で分析し最適な商品をレコメンドするチャットボットを提供しています。

AIを用いたチャットコマース「Connectly.ai」

設立年：2021年
国：米国
直近調達：8Mドル/23年9月/Series A
累計調達金額：18Mドル
主要投資家：Canary, Unusual Ventures, Global Founders Capital, Marathon Venture Capital, RX Ventures
会社HP：https://www.connectly.ai

事業概要:
・AIを用いたチャットコマース
・Sofia AIというAIコンシェルジュをEC事業者に提供
・リード獲得、リテンション対策、カスタマーサポートなどカスタマージャーニー全体を半自動化
・月$20から、no-codeで実装可能
・shopify、Salesforce連携、多言語対応、複数PF（Instagram、WhatsApp、SMS…）対応
・元Facebook,Google,Uber,NASAのベテランが創業

調達ニュース(2023年9月 調達時点)
https://finance.yahoo.com/news/connectly-raises-7-85-million-140000495.html

上記3事例においてはマーケティング、顧客コミュニケーションにおける一元化、自動化、効率化に力点をおいていますが、パターン2としてはよりクリエイティブの生成との連動を重視した事例をご紹介します。「Workmagic」はテキスト、画像、動画等のクリエイティブ生成とマーケティング運用との連携・自動化に力点をおいています。

EC企業向けのマーケ支援AI「WorkMagic」

設立年：2023年
国：米国
直近調達：2Mドル/23年10月/Seed/
累計調達金額：2Mドル
主要投資家：Sinovation Ventures
会社HP：https://www.workmagic.io

事業概要:
・EC企業のマーケティング自動化AI
・テキスト、商品画像、動画などのクリエイティブ生成も行うのが特徴
・小規模なShopify sellerが初期ターゲット
・AI copilot機能では広告効果・チャネル分析を元に最適なクリエイティブを提案、投稿自動化が可能
・リリース2ヶ月で数千の登録者を獲得
・TikTok adsのグロースヘットが創業
・0円から利用可能で有料プランも月99ドル

調達ニュース(2023年10月 調達時点)
https://techcrunch.com/2023/10/24/workmagic-wants-to-automate-marketing-for-shopify-sellers/

パターン3としてはクリエイティブ生成に特化している事例をご紹介します。本領域はTypefaceを始めとして、商品説明等のテキスト、商品画像、商品説明動画、3Dモデル等多岐にわたるフォーマットの生成AI企業が出ております。「OXOLO」は商品の説明動画を簡単に生成できるサービスです。Amazonにおいても商品動画を掲載している商品のCVRは高いと言われるなどECサイトのリッチ化において商品動画のフォーマットは拡大が予想されます。

商品説明動画の生成AIサービス「OXOLO」

設立年：2020年
国：ドイツ
直近調達：14Mドル/23年10月/Series A/
累計調達金額：14Mドル
主要投資家：ubert, DN Capital, Christian Vollmann, Mischa Rurup, Stefan Wiskemann
会社HP：https://linkr.bio/gacorhabiss

事業概要:
・商品説明動画の生成AIサービス
・商品ページのURLやテキストをもとに簡単に説明動画の作成が可能
・動画は、ターゲットユーザーのデモグラやAIアバターの属性（性別、言語etc）、出力PF（amazon、etsy、youtube etc）など設定可能
・APIを活用することで大量の動画生成が可能
・分析も充実しておりABテスト等による運用も可能
・SEOの向上やCVR/AOVの向上が見込める

調達ニュース(2023年10月 調達時点)
https://techcrunch.com/2023/10/24/oxolo-bags-e13m-for-gen-ai-driven-video-platform-which-can-optimise-engagement-on-the-fly/

「Luma AI」は中でも3Dモデルの生成に強みを有しています。コマース領域においてもVision Proを始めとしてAR領域が盛り上がっていくトレンド、メタバース空間における消費経済圏の拡大に伴い3Dデータの生成はより重要になってまいります。

3Dデータの生成AI「Luma AI」

設立年：2021年
国：米国
直近調達：43Mドル/24年1月/Series B/
累計調達金額：69Mドル
主要投資家：NVIDIA, Andreessen Horowitz, General Catalyst, Matrix, South Park Commons
会社HP：https://lumalabs.ai

事業概要:
・3Dモデルの生成AI
・スマホアプリからでも作成できる簡単さ
・元々“動画to3D”中心。24年１月にtext to 3D「Gnie1.0」をリリース
・Video to 3DのAPIは1生成当たり$1、約30分で提供
・通常3Dモデル生成には1生成当たり$60～$1500で2～10週間かかっていた
・同領域は競合多数（Stability AI、3DFY、Auctoria、Mirage…）
・Vision ProのXR始め、EC、ゲーム、エンタメ領域等への応用が期待される

調達ニュース(2024年1月 調達時点)
https://techcrunch.com/2024/01/09/luma-raises-43m-to-build-ai-that-crafts-3d-models/

以上、コマース×マーケティング領域における3つの参入確度ごとのスタートアップ事例でした。

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