こんにちは、New Commerce Ventures松山です。大袈裟なタイトルですが、今回は資金調達にあたって多くの起業家を悩ませるピッチ資料について、まとめてみました。
数年前にYouTubeで「ピッチの作り方」と題した動画を投稿しましたが、その後もたくさんの素敵なピッチを拝見するにつれて、自分の考えもアップデートされており、今回は改めて「資金調達を成功させるためにピッチに必要な要素は何か?」を考えてみました。
ピッチ作成は事業内容をまとめるだけでなく、理想の状態を定め、そこから逆算することで今の事業や仮説検証に足りていない点を洗い出す効果もあります。これが正解という訳ではなく、1つの考え方として皆様のお役に立てれば幸いです。
そもそもピッチの目的は何でしょうか?資金調達においては、投資家に対して『この事業に投資したい!』と思わせることがピッチの目的だと思います。
では、VCが投資したいと思う事業は何なのか?私は時価総額が大きくなりそうな事業であると思います。VCは投資により大きなリターンを得て、出資者へ還元することがミッションです。もちろん金儲けだけでなく、新たな産業の創出や社会課題の解決、起業家の支援等のビジョンやミッション、志もありますが、出資者のお金を預かり運用する以上、リターンを生むことが求められます。 VCは、投資先スタートアップのExit時の時価総額が投資時の時価総額より大きくなればなるほど、大きなリターンを得ることができます。このため、『時価総額が大きくなりそうな事業』であることは投資の大前提だと感じます。
それでは、『時価総額が大きくなりそうな事業』とは、どんな事業なのでしょうか? 時価総額は、企業の成長性に対する評価であり、一概には言えませんが、将来的に大きな利益を生む可能性が高ければ高いほど時価総額も大きくなります。 将来的に大きな利益を生む事業の前提として、『大きな市場で、顧客から選ばれる理由があり、利益率が高いビジネスモデルであること』が条件と考えます。
自社の対象とする市場規模は、自社の売上の上限を規定します。つまり、大きな市場であればあるほど、自社の売上規模も増加できる余地があります。たとえば、〜な市場では、〜の数を超える事業を創ることはできません。
次に競合よりも選ばれる理由(競争優位)ですが、ビジネスは誰かの課題を解決して対価を得ることです。市場規模とは、誰かの課題を解決して得る対価の総和です。 企業はこの市場を奪い合い、競争し合っています。顧客が持っている財布(お金)は変わりませんので、競争相手よりも選ばれる理由がなければ、顧客は自社にお金を払ってくれません。そのため、売上を増加させていくためには、市場の中で競合よりも選ばれる理由が不可欠です。
選ばれる理由は、バリュープロポジションと呼ばれます。下記図がわかりやすいと思いますが、顧客が求めているが競合が提供できていない領域があります。ここを自社が提供することができれば、競合よりも顧客にとって選ばれる理由を構築することができます。
このように大きな市場で選ばれる理由があったとしても、そのビジネスが利益を生まなければ事業は継続することができません。また、利益が生まれていたとしても利益率が低ければ、事業成長のための投資ができず、成長スピードは鈍化してしまいます。そのため、利益率が高いビジネスモデルであることが望まれます。
このようにビジネスとして求められる3つの条件がクリアできていても、それを実現できるチームがいなければ実現することはできません。そのため、ピッチにおいては、『大きな市場で、顧客から選ばれる理由があり、利益率が高いビジネスモデルで、それを実現できるチームあること』を伝えることが重要と考えています。
投資家に対して自社が『大きな市場で、顧客から選ばれる理由があり、利益率が高いビジネスモデルで、それを実現できるチームあること』を納得させるためには2つの観点が重要であると感じます。
1つ目はわかりやすく伝えることです。これは当たり前のように聞こえますが、思っている以上にわかりづらいピッチは多く存在します。言うは易く行うは難しですが、誰もが理解でき、納得するわかりやすさが重要です。
2つ目はビジネス評価に必要な要素を伝えることです。以下の図は海外の著名VCのピッチテンプレートで求められている要素ですが、概ね各社の求めている要素は共通しています。
求められる要素を理解し、わかりやすく伝えることで『大きな市場で、顧客から選ばれる理由があり、利益率が高いビジネスモデルで、それを実現できるチームあること』を納得させていきましょう。
ピッチは、中学生でも理解できるくらいわかりやすいスライドと説明にすることが望ましいと考えています。投資家は各業界のプロではありません。また、連続でピッチを聞いていて頭が回ってないということも正直あると思います。そんな状況でも瞬時に理解できるくらいわかりやすい表現が重要です。
専門用語・業界用語をそのまま使っていたり、業界構造の説明がないケースが多くあります。また、難解な表現が多いケースもありますが、難解な表現は、誤解を生んだり、論点が整理できていない印象を与えるため、なるべくシンプルに誰が見てもわかりやすい表現でスライドや説明を見直してみてください。
私がわかりやすく理解してもらうために意識している点は5つあります。
スライドは、1スライド1メッセージとその根拠・図解として統一しています。以下スライドのようにメッセージを読めば、このスライドで伝えたいことが瞬時に伝わるようにするイメージです。
日本人は文字表記の文化的にも左上から右下へと視線が移動するので、左上のタイトルで何についてのスライドかを理解、その次にメッセージを読み、スライドで伝えたいことを理解、その下の根拠・図解で納得するという流れです。
スライド毎に異なるレイアウトになっていると毎回理解までに時間がかかってしまいます。そのため、レイアウトは全スライド共通化して、ピッチを通じてひと目でどこに何を書いているのかを瞬時に理解できるようにすることが良いと感じます。
ショーレースのようなピッチは、喋りを補足する画像を表示するというやり方もありますが、資金調達時のピッチは、DD時に繰り返し確認したり、社内共有されるため、喋りなしでも理解できる表現にしておくことが重要と思います。
スライドのメッセージは、伝えたいことを凝縮し、なるべく短くわかりやすくします。よくクリスタライズ(結晶化)と言いますが、1文字でも文字を削って、伝えたいことが瞬時に伝わる文章を作ります。
コンテンツはメッセージを補足する根拠や図解を記載します。コンテンツの目的はメッセージの理解を促進したり、納得させることなので、メッセージとの整合性が求められます。
また、根拠は数値化と比較が重要です。例えば、高い・低い、大きい・小さい、多い・少ないのような表現は、数値化されて、且つ、比較されていなければ根拠にはなっていません。
複数の選択肢から1つを選ぶような場合も選択肢がMECEであること、その中からどのような基準で選択したのかを明示し、メッセージを補足する根拠・図解となるように注意しましょう。(このあたりは馬田さんの「解像度を上げる」が非常に勉強になります。)
次のポイントはストーリー(物語)で語ることです。淡々と説明するのではなく、ストーリーとして語ることにより、理解と納得感が増していきます。
よくあるのが、「次に〜です」という感じでスライド毎に説明するケースですが、スライド毎に説明を分断するのではなく、「だから〜です」「一方で〜がどうなってるかというと〜」「では誰がターゲットかというと〜」というようにスライド毎の説明を繋げることで、スムーズに理解できるようなります。
次項では、実際にビジネス評価の必要要素をどのようにストーリーにするのか?を見ていきます。
最後はピッチは短く伝えることです。ピッチの時間としては最大でも10分以内、7〜8分で論点を伝え切れるピッチが望ましいと感じます。
伝えたいことがたくさんあると思いますが、発表が長いと論点が整理できていない印象を受けます。また、説明だけで面談時間が終わるケースがありますが、これは投資家・起業家双方にとって効率が悪い時間になってしまうと感じます。ピッチでは相手に興味・関心を持たせ、詳細はその後の質問に対して回答していくことで、相手にとっても満足度の高いディスカッションを実現できます。
特に市場やトレンド、背景など既に周知の事実については、なるべく端的に説明して相手が飽きないようにする必要があります。
ここまでピッチをわかりやすく伝えるための表現について、お話ししましたが、ここからが本番となるピッチのストーリーです。前述のビジネス評価に必要な要素をストーリーで説明していきます。個人的には以下のような項目&ストーリーがおすすめです。
項目 | 内容 | ストーリー |
---|---|---|
タイトル | プロダクトをひと言で説明 | 私は〜なサービスを運営している |
着想の背景 | この領域に注目すべき理由(社会変化・社会課題・原体験等) | 市場変化により、海外では〜な課題が生まれ、その課題を解決している企業が急成長している 国内でも市場変化が進み、同様の課題が生まれているが、その課題を解決する企業がまだ生まれていない |
ターゲット | 具体的なターゲット | 特に〜な企業が課題を抱えていて |
課題 | ターゲットの既存手段と既存手段に対する不便・不満 | 〜な既存手段を利用しているが、〜な点が課題となっている |
プロダクト | 課題の解決方法 | だから、〜なサービスでこの課題を解決する |
使い方 | プロダクトの使い方を画像や動画で説明 | まずは〜して、〜して、〜のように使用する |
競争優位 | 競合・既存手段との比較 | 改めてまとめると〜な既存手段が存在するが、〜な理由で優位性がある |
ビジネスモデル | マネタイズ方法 | ビジネスモデルは〜から〜のように〜円を徴収する |
トラクション(定量) | 現在の検証内容と検証結果(売上・利用者数・継続率等) | 現在は〜な顧客へ〜なサービスを提供しているが、〜社が導入している |
トラクション(定性) | 提供価値に満足しているユーザーのコメント | 導入企業は〜な点に満足しており、継続意向である |
トラクション(ネクストアクション) | 現在の実績を分析したうえでのアクション | 現在の顧客層〜な層の受注率が高く、〜な施策で〜層の獲得に注力する |
市場 | TAM | 市場規模は初期ターゲットで〜億円、その後〜なターゲットで〜億円の市場となっている |
成長戦略 | 今後の事業拡大の方向性 | さらに〜な強みを活かして、〜な機能を提供、〜億円の市場獲得を目指す |
事業計画 | 業績・上場時時価総額の計画 | 事業計画としては、20XX年に売上〜億円・営業利益〜億円・時価総額〜億円で上場を目指す |
チーム | チームメンバー紹介 | チームは〜の領域で最適なメンバーで構成されている |
ラウンド概要 | 調達予定額・資金使途 | 今回は〜のために〜円を調達したい |
タイトル〜ビジネスモデルまではビジネスアイデアの仮説であり、その仮説の検証結果としてトラクションがあり、仮説の確実性を説得する流れとなっています。現在の仮説の確からしさを伝えた後に実際に狙える売上規模とさらに将来的にどのような規模を目指すのかを語っていきます。
それぞれの項目の内容と注意したい点は以下となります。
ピッチの表紙であるタイトルページでは、あなたのプロダクトを一言でわかりやすく説明します。誰でも聞いた瞬間にイメージが浮かんでくるように一言で事業内容をまとめてみましょう。
ここではなぜこの事業に取り組むのか?を説明します。アイディアを着想した背景というよりは、なぜこの事業が成長すると考えているのか?その背景を説明するという方がわかりやすいかもしれません。
社会・環境の変化に伴い生まれている課題や起業家自身の原体験を通じて、この事業に取り組む理由を説明してください。よくあるケースとしては以下のようなパターンがあります。
原体験を語るケースが多いですが、いずれのケースも一業務の視点でなく、業界全体・市場全体からブレイクダウンしてインパクトのある課題であることを丁寧に説明することが重要です。逆に言えば、課題が小さければ事業自体の成長余地も小さいと判断されるため、短期間で急成長を目指すスタートアップというビジネスモデルを選択するのであれば、大きな課題を選ぶことが求められます。
前述の業界・市場の中で特に課題を感じているターゲットは誰か?を説明します。
ターゲットによって課題感は異なります。たとえば、「試着できないからオンラインで服は購入しづらい」という課題の場合、既に服をオンラインで購入しているユーザーは多く存在します。では、試着できないから悩んでいるのは誰なのかを考えると、私服は満足しているが、体型に合わせるスーツを買う際は悩んでいるといった課題が見えてくるかもしれません。そうすると、スーツを着る職業の人がターゲットになる可能性が高くなります。その中でも「どんな職業なのか?」「どのくらいの頻度で購入している人なのか?」「ファッションに対する感度は高いのか低いのか?」のようにセグメンテーションの切り口がさらに広がってきます。
B2Bも同じく、たとえば飲食店がターゲットの場合、飲食店の業態・取扱メニュー・運営店舗数・立地・価格帯・オーナー店長か雇われ店長か等多くの切り口が存在します。
課題を抱えているターゲットの最大公約数、共通項を有するセグメントを定義していきましょう。
課題では、ターゲットが悩んでいる課題をさらに一歩深掘りして、その課題を解決する既存手段が解決できていない課題は何か?を説明します。
ある課題に悩んでいるターゲットは、何かしらの既存手段や代替手段でその課題を解決しているはずです。たとえば、旅行先で美味しい飲食店を見つけたいという場合は、「食べログで探す」「Googleで検索する」もありますが、「Instagramで探す」「観光案内所に聞く」「地元の人に聞く」など解決策は無数にあります。
まず現在の課題解決の既存手段・代替手段が何かを示し、その手段では満たされていない不便・不満を明らかにします。ここでは既存手段を一覧化して顧客が求める価値を比較して表示してもらえるとわかりやすいと感じます。
冒頭でピッチでは『大きな市場で、顧客から選ばれる理由があり、利益率が高いビジネスモデルで、それを実現できるチームあること』を説明すると書きましたが、既存手段に対する不便・不満=既存手段で解決されていない課題を見つけられれば、その課題を解決することで、顧客から選ばれる理由を産み出すことができます。
既存手段では解決されていない課題を明らかにした後は、その課題の解決方法としてプロダクト概要を説明します。自社のプロダクトがどのような機能を提供して、どのように課題を解決するかを1スライドでひと目で理解できるように示します。
プロダクト概要を説明した後に実際のプロダクトのイメージを理解してもらうために、プロダクトの使い方を説明します。文字だけでは想像しづらいため、実際のプロダクト画像やデモ画面・映像を用いて使い方を説明します。
プロダクト内容を理解してもらった後は、改めて既存手段と比較して既存手段より選ばれる理由は何か?を説明します。
ポジショニングマップや比較表を用いて、競争優位を明示しますが、この際に注意したいのは比較の軸は「顧客が求める価値・顧客の選定基準」とすることです。チームや技術は顧客が選ぶ理由にはならないため(参入障壁の構築、競争優位の源泉としては意義があると思いますが)、あくまで「顧客から競合より選ばれる理由」を明示します。
従来の既存手段より自社プロダクトが高い効果を生むという点もきちんと数値化して示し、説得力の高い比較表にしていきましょう。
顧客の課題とその課題解決のために最適なソリューションであることを説明してきましたが、次はビジネスとして「どのようにマネタイズするか?」を説明します。「誰に何を提供して、どのようにいくらもらうのか?」について、モノ・サービスとお金の流れをシンプルに図解して明らかにします。
ビジネスモデルは、国内外の同業種や他業種同ビジネスモデルの企業を研究して、どのようなビジネスモデルか?なぜそのビジネスモデルを選んだのか?を分析、戦略的に設計しましょう。
ここまではビジネスアイディアを説明してきましたが、トラクションではそのアイディアが本当にターゲットの課題を解決しているか?を説明するために、実績を示します。
アイディアが本当にターゲットの課題を解決しているのであれば、ターゲットはそのプロダクトに対価を支払い、継続して利用してくれているはずです。
そのため、「実際にどれだけのターゲットが使ってくれているか?=ニーズの証明」を説明するために導入社数・購入者数・受注率・CVR・売上等、「ターゲットが利用し続けてくれているか?=継続性の証明」を説明するためにリテンションレート・チャーンレート等の実績推移を示します。
アイディア段階のピッチの場合、これらの数値を示すことができませんが、インタビューやSNSなどを使ってニーズの有無をテストをしてみて、その結果を数値化して提示してあげると良いと思います。
定量的な根拠に加えて定性的な顧客の声でも実際に課題が解決されていることを示します。顧客に対してインタビューを行い、利用している理由を記載します。
この利用している理由は、前述の競争優位(競合より選ばれる理由)となっている価値に満足していることが証明できていることが望ましいです。
次に現在の実績を踏まえ、どう成長させるか?を説明します。このスライドは、利用動向の分析とそれに伴う改善策を提示することで、PDCAを回してプロダクトを成長させることができるチームなのかを納得させる材料としても使えます。
プロダクトのステージにもよりますが、プロダクトの成長は主にユーザー数(契約社数)、CVR(受注率)、リテンション(チャーン)、購入単価の4つの要素を改善して伸ばしていくことが求められます。
これらの要素の改善点を見つけるために、ユーザー属性別、利用目的別、行動パターン別等でユーザー数、CVR、リテンションレート、購入単価を分析していきます。
ターゲットの中でも特定の目的を持った利用者が多かったり、特定の獲得経路や行動パターンをしているユーザーのCVRやリテンションが高い傾向、または逆にすぐに離脱してしまったユーザーの共通点等を見つけ、さらにKPIを伸ばしていくためにどのような施策を行っていくかを明らかにします。
ここもアイディア段階の場合は、記載が難しいですが、インタビューやSNSでのテストを踏まえての考察を踏まえたターゲットの絞り込み・仮説のピボットなど、実行した結果を基に分析、次のアクションへ落とせる人物だというアピールをしてあげたほうが良いと思います。
次にこのビジネスが成長した際にどのくらいのポテンシャルを秘めているかを示すために市場規模を説明します。
市場規模は、産業の市場規模ではなくTAM(Total Addressable Market)と呼ばれる自社が現実的に狙える市場規模を記載します。
マクロな産業の市場規模は、市場の成長性やトレンドの判断には役立ちますが、産業内のさまざまなソリューションに対する対価の集合体となり、自社の事業が狙える市場規模とは異なります。
たとえば、飲食予約サービスを提供している場合、外食市場内のデリバリーや事業所内の飲食サービスは対象外になりますし、ファーストフードやカフェのような業態も対象外となります。さらに、飲食予約サービスは飲食料金をそのまま売上にできる訳ではないので、実際に狙える売上規模とは大きく異なります。
ビジネスモデルが1予約あたりの固定単価を徴収するモデルなのであれば、対象店舗もしくは対象ユーザーの年間外食回数×固定単価が狙える最大の市場規模になりますし、飲食料金の一定割合を手数料として徴収するモデルなのであれば、対象店舗の売上×手数料率が狙える最大の市場規模になります。
このようにターゲット顧客数×年間購入単価で自社が現実的に狙える市場規模(=TAM)を記載します。初期ターゲットに加え、その次のターゲットや最終的に獲得を目指すターゲットでそれぞれどのくらいの市場規模を狙えるかも記載しましょう。
次に「さらに今後どのように事業を拡大し、最終的にいくらの市場を目指すのか?」を説明します。このスライドでは大きな成長を期待できるワクワク感のあるストーリーを話せるかが勝負です。
まだ妄想段階だったとしても初期事業で得た顧客基盤やデータを活用して、〜な大きな市場を獲得できるビジネスを目指すという絵を描きます。
・現在の事業の何を強みにして、次の事業を作るのか?
・具体的にどのような事業なのか?
・その事業の市場規模はいくらか?
特に最初の市場が小さい場合は、成長戦略の解像度を高めなくては相手にされないケースもあるので、注意してみてください。
成長戦略を説明した後は、その戦略をPLに落とした事業計画を提示します。そのうえで、「いつ時点で売上・利益はいくらで、時価総額いくらで上場するか?」を説明します。
事業計画は、VC側でも実績や類似企業を参考に自社で保守的な事業計画を作り、達成可能性の高い売上・利益を算出、それに伴い類似企業をベースに想定時価総額を算出します。そのため、このスライドでは数字自体の正確性というよりも「どのくらいの上場規模を目指しているのか?そこから逆算して思考しているか?」を確認していることが多いのではないかと思います。
一方で、トップシェアの企業より数倍以上の顧客数になっていたり、サーバー費・配送費等オペレーションにかかる費用を加味できていないケース、受注率を甘く見て従業員数が少なすぎるケース等は多く存在するため、競合・類似企業のIRを分析して、現実的な戦略を考えることは重要と思います。
ここまで事業内容を説明してきましたが、ここではチームメンバーの紹介を通じて『大きな市場で、顧客から選ばれる理由があり、利益率が高いビジネスモデル』を実現できるチームあることを説明します。
現在の事業に取り組みチームとして最適であることを示すための業界経験や実績、個人としての経歴を伝えます。今回の事業にとってアピールできる強みのあるチームであれば、ピッチの冒頭でチーム紹介を行い、後のスライドに納得感を持たせる方がベターかもしれません。
最後は今回の資金調達の概要を伝えます。資金使途と調達予定額を示し、今回のラウンドでの放出株式比率・バリュエーションを伝えます。バリュエーションはこちらから伝えず、VC側の反応を踏まえ、議論していくこともできるので、交渉材料として使うのも良いと思います。
以上、1〜16の要素を通じて、『大きな市場で、顧客から選ばれる理由があり、利益率が高いビジネスモデルで、それを実現できるチームあること』を伝えていきます。そして、伝える際はとにかくシンプルにわかりやすくを意識してみていただければと思います。
ピッチ資料は1回作って完成ではなく、日々の検証やピッチ相手からのアドバイスを踏まえ、日々ブラッシュアップされていくものです。本当に言うは易し行うは難しで、私自身もファンドの資金調達という点で何度も先方の反応や質問を踏まえブラッシュアップを繰り返してきました。(結局一発では作れないってことですね・・)
最初は思ったように伝わらなかったり、視点が欠けていたり、悔しい思いをすることもあると思いますが、それを糧に一撃で投資したいと思わせるようなピッチを目指していただけたらと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました!「ピッチへのフィードバックがほしい」や「アイディア自体の壁打ちがしたい」などあれば、お気軽にご連絡ください!
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