今回は、ビジネスアイディアの構想から事業成長までのリーンスタートアップのプロセスを私自身の起業の失敗経験やZ Venture Capital時代に運営していたアクセラレーター「Code Republic」での経験、そして、多くの起業家や投資家の方々から学んだ知見を基により具体的に紹介します。
このノウハウが少しでも起業家・起業家志望の皆様に貢献できれば幸いです。
1. スタートアップとは何か?
2.アイディア
3.仮説検証
4.プロダクト
スタートアップは短期間で急成長を目指す企業を意味します。たとえば、Facebookは1年で500万UUの急成長、Tinderは1年で200万UUの急成長を実現しています。
このように短期間で急成長するためには大きな市場で競合よりも選ばれることが重要です。(厳密に言うと大きな市場もしくは今後大きくなる市場)
市場規模は自社が獲得できる最大の売上規模であるため、この市場規模自体が小さければ、それ以上の売上を実現することはとても困難です。
さらに市場には多くの競合が存在します。直接競合だけでなく間接競合も含めて、多くの企業が市場シェアを奪い合っています。
自社がこの市場でシェアを獲得するためには、顧客から選ばれなければなりません。そのためには、**バリュープロポジション(顧客が求めているが、競合が提供していない自社が提供している価値)**が求められます。
しかし、バリュープロポジションがあっても利益を生むビジネスでなければ成長することはできません。逆に大きな利益を生むことができれば、利益を再投資して拡大再生産で成長を実現できます。
このためスタートアップのアイディアとしては、大きな市場で選ばれる理由があって利益率の高いビジネスアイディアであることが望ましいと考えています。
このようにスタートアップは、大きな市場で選ばれる理由があって利益率の高いビジネスアイディアを構想しますが、その多くは失敗に終わります。
スタートアップの失敗要因は「ニーズが存在しなかった」が最も多く、40%以上が顧客が求めていないプロダクトを開発しています。
現在のメガベンチャーを創業した偉大な起業家も大半が最初のアイディアは失敗に終わっています。たとえば、Facebookの最初のアイディアは好みのタイプを投票するサービス、YouTubeは動画でデート相手を探すサービス、Instagramは位置情報の共有アプリでした。
このように優秀な人物であったとしても、アイディアはあくまで想像であり、実際に顧客の反応を見てみなければ成否はわかりません。特にアイディアの構想に時間をかければかけるほどサンクコスト効果から自分のアイディアに固執してしまうケースが多く存在します。私自身も自分のアイディアは良いアイディアだと思い込み、否定的な意見も曲解してしまい、顧客が求めていないプロダクトを作ってしまった経験があります。
このアイディアという思い込み=仮説を分解して、一つずつ検証していくことで成功確率を高めていく手法が、スタートアップの仮説検証です。
米国のトップVCであるAndreesen Horowitzの創業者であるMark Andreesenは、これをリスクの玉ねぎ理論と呼び、アイディアの不確実性を玉ねぎの皮を剥くように一つずつ検証、改善することで、成功確率を高めていくことを推奨しています。
特に現在は、インターネットの普及によりサーバーやホームページ制作に掛かるコストは低下、SNSの普及により無償でターゲットへリーチすることもでき、誰もが簡単に仮説検証できる環境となっています。
急がば回れ、仮説検証をせずにプロダクトをリリースしてから失敗するより、仮説検証により小さな失敗と改善を繰り返しながらプロダクトをリリースする方がスピード・コストを圧縮しながら成功確率を高めることができます。
では、仮説検証を始めるための最初のステップである仮説(=アイディア)はどのように設計すれば良いのか?
次章ではアイディアの構成要素を確認していきます。
仮説検証を始めるための仮説=アイディアは、以下4つの問いに対する解答で構成されます。
①誰のどんな課題をどう解決するか?
②競合より選ばれる理由は何か?
③どのように利益を生むか?
④市場規模はいくらか?
ビジネスとは、誰かの課題(不満・不便・不安・悩み…)の解決により、対価を得ることです。そのため、この質問はアイディアの構成要素において最も重要な質問です。
まず『誰の』は実在する人間を想像できるくらいに具体的なターゲット設定が必要です。
仮に男子大学生というターゲットの場合、「どの大学なのか、どこに住んでいるのか、趣味は何か、一人暮らしなのか/実家暮らしなのか、アルバイトをしているか/してないか、部活をしているか/していないか、外交的か/内向的か・・・」のように様々なセグメントに分けることができます。そして、そのセグメントによって価値観は異なり、課題(不満・不便・不安・悩み…)も異なります。
たとえば、「海外留学する際の情報が少ない」という課題を解決するとします。この課題を抱えている人は、そもそも海外留学に興味を持っている人ですが、海外留学の目的、留学希望先で求めている情報は異なりますし、海外留学した先輩との交流会を提供している大学と提供していない大学の学生では課題の深刻度が異なるかもしれません。
上記はB2Cの例ですが、B2Bも同様です。たとえば、「飲食店の仕入業務の負荷」という課題の場合、チェーン店なのか個人経営の店舗なのかによって課題感は異なります。さらに食材にこだわる高価格帯の店舗か低価格帯の店舗かによっても課題感は異なります。
ターゲットを絞ることに対して「私のサービスはマス向けなので、ターゲットは全員です。」と答える方がいます。もちろんマス向けのサービスを目指すことは大賛成ですが、どんなサービスもリリース初期はターゲットを明確に絞っています。
Facebookは「ハーバードの大学生」から始まり、Amazonは「オンラインで書籍を購入する人々」から始まり、Googleは「論文を検索する研究者」から始まっています。
米国のトップアクセラレーターY Combinatorを運営していたSam Altmanは以下のように述べています。
次に『どんな課題』は、深刻な課題、かつ、既存手段で解決されていない課題が重要です。
ビジネスは誰かの課題を解決することで対価を得ることですが、深刻な課題でなければ対価を得ることができません。社会課題や業界の課題を解決するというアイディアは、実はその課題に本当に悩んでいる人がいないというケースも多く存在します。たとえば、「街のゴミが増加している」という課題は地球や地域というマクロな視点では深刻な課題ですが、個人や法人というミクロな視点では深刻度は低く、課題解決のために対価を支払う個人・法人はほとんどいません。
Y CombinatorのMichael Seibelは以下のように述べています。
いわゆるバーニングニーズと呼ばれるものですが、深刻な課題であれば、まだ未成熟なプロダクトであったとしても顧客は喜んで利用してくれます。Nice to have(あったら便利だな)ではなくMust have(なければ困る)なプロダクトをつくるためには、このバーニングニーズを見つけることが重要です。
そして、バーニングニーズは既存手段では解決されていないことが条件です。既に解決策が存在しているのであれば、顧客はきっと既存手段で満足してしまうはずです。これが2つ目の問いである「競合より選ばれる理由は何か?」に繋がります。
競合より選ばれる理由は、競合が解決できていない課題=競合の不便・不満・不足を解決することです。つまり、バリュープロポジション(顧客が求めているが、競合が提供しておらず、自社が提供している価値)となります。
よくあるケースとして、そもそも競合を調べていないケース、「競合はいません」と発言するケースがあります。競合を調べていないことは少ないですが、「競合はいません」と発言するケースは比較的多くあります。この発言は「全く同様のサービスを提供している競合はいない」という主旨ですが、同様のサービスを提供している直接競合だけでなく、同じ課題を解決しているサービスはすべて競合(間接競合)になります。同様の価値を提供している製品・サービスがないということは、そもそもその価値自体にニーズがないのかもしれません。
たとえば、Airbnbがリリースされた当時、個人の部屋を共有するサービスは存在していませんが、旅行先の宿泊場所としては、ホテル、ゲストハウス、ホテル予約サイト等多くの競合が存在します。
競合より選ばれる理由を検討するためには、まず直接競合・間接競合をリストアップしてみます。競合の中でもシェアが大きい企業や短期間で急成長している企業の成長要因を分析することにより、自社の選ばれる理由を具体化していきます。
ビジョナル代表の南氏はビズリーチの創業にあたり、事例調査だけでなく、USの類似企業へヒアリングやその企業がベンチマークとしていた企業まで徹底的に調べ尽くしていたそうです。
アイデアを思いついたときは、過去の事例を徹底的に収集・分析します。調べる対象は日本だけでなく、世界です。
ビズリーチについても、自分のアイデアに近しい事例を探したところ、米国で似たようなビジネスを実現している人がいた。話を聞きに行くと、「ベンチマークしたのはmatch.comだ」と教えてくれました。そこで僕は、自社の最初の役員としてmatch.com日本支社の元責任者を招き、たくさんのヒントをもらいました。
“面白い”ビジネスのつくり方 小澤隆生、南壮一郎が語るスタートアップ
徹底的に競合を分析して「競合より選ばれる理由」を見つけましょう!
前項までは提供価値に対する問いでしたが、どんなに競合よりも選ばれる価値を提供していたとしても、持続的に利益を生み出すビジネスモデルがなければ、ビジネスとしては成立しません。
この問いでは、誰に何を提供していくら対価を得るのかというビジネスモデルと顧客1人あたりのユニットエコノミクスを考えます。
ビジネスモデルは大きく5つに分類され、多くのビジネスがこの組み合わせで構成されていると思います。ターゲットにとって最適なビジネスモデルが何かを考え、具体化していきましょう。
①トランザクションモデル:消費者に対して都度販売して、対価を得る
②広告モデル:消費者へ無償提供して、広告主から対価を得る
③サブスクリプションモデル:定額課金で継続的に価値を提供する
④フリーミアムモデル:一部価値を無償で提供して、高水準の価値を求める消費者から対価を得る
⑤マッチングモデル:需要と供給をマッチングして手数料を徴収する
ビジネスモデルを考えた後は、そのビジネスモデルが成立するかを考えます。
企業は成長のために持続的に利益を生み、利益を事業成長のために再投資するという循環が求められます。持続的に利益を生みすことのできるビジネスモデルかを判断するために、ユニットエコノミクスという概念が用いられます。
ユニットエコノミクスは、LTV(1人あたりの顧客が生み出す利益)とCAC(1人あたりの顧客を獲得するためのコスト)の関係性を表します。
LTVは「1顧客を獲得するといくらの粗利を得られるか?」を示しており、以下のような数式で算出します。
・(売上-売上原価)÷1人あたり平均購入回数÷購入者数×平均継続期間
・(売上-売上原価)÷ 顧客数 ÷ 平均解約率
CACは「1顧客を獲得するためにいくら掛かるか?」を示しており、以下のような数式で算出します。
・(営業費+マーケティング費)÷ 新規顧客数
一般的には、LTV>CACの3倍が目安とされていますが、エコミクスが成立せず失敗するケースも多く存在しています。
他にもよくあるケースが、月額1万円のSaaSで顧客獲得はセールス中心というケースです。このケースはセールスマンのコストを回収するまでに数年の期間を要する計算となり、収益性は低いと判断しています。
また、ビジネスモデルにおいては、価格設定に関する質問もよくあります。価格設定においては顧客が求める価格から計算する顧客起点やプロダクトの提供に係るコストから計算するコスト起点等がありますが、アイディア構想の段階では競合の価格を基準として、インタビューやMVP検証を通じて、実際に顧客が支払ってくれる金額感を決めていく方法がわかりやすいと思います。
このように「どのように利益を生むか?」の問いに対しては、エコノミクスを意識してビジネスモデルを具体化していきます。
課題を抱えるターゲットとビジネスモデルが決まったら、自社が獲得できる売上の最大値である市場規模を計算します。
ここでいう市場規模とは、広告市場X兆円のような産業の市場規模ではなく、TAM(Total addressable market)を指します。TAMは「ターゲット顧客数×1人あたり年間消費額」で算出します。
ある課題を解決する市場は、その課題を解決する複数の企業により市場シェアを奪い合っています。競合との競争を踏まえ、最低でも数百億円以上の市場規模がなければ、IPO規模の売上を獲得するのは難しいと感じます。TAMを算出する際は、対象市場のシェア第1位の企業の顧客数を調べ、現実的に狙える顧客数も併せて確認しておきましょう。
市場規模が大きく競合数が少ない市場は、売上を獲得しやすい市場と言えますが、競合が少ないということは独占企業や法規制など新規参入に対する障壁が高い市場の可能性もあり、調査が必要です。
一方で、短期間での急成長が求められるスタートアップにとって、今後急成長が予測される小さな市場で圧倒的なシェアの獲得を目指すという戦略もあります。
PaypalやPalantirの創業者でありFacebookやスペースXの投資家として知られるPeter Thielは、今後急成長が予測される小さな市場を見つけ、独占して拡大を目指すことを推奨しています。
今後急成長が予測される小さな市場は、競合が少なく、少数の特定の顧客層が集中しているため独占しやすい、このため市場の成長と共にスタートアップ自体も急成長することが期待できます。
このように「市場規模はいくらか?」の問いに対しては、市場の成長性を加味して実際に狙える市場規模(TAM)を算出していきます。
前章では、仮説となるアイディアの構成要素を4つの問いから説明しましたが、ここからは4つの問いに対する解答が事実なのかを検証、検証結果に応じて改善を繰り返すプロセスです。
冒頭でも述べたように仮説検証の目的は、「きっと〜な課題があるだろう」「このアイディアは素晴らしい」という思い込みが本当なのか?を確認、仮説から不確実性を取り除き、成功確率を高めることです。
検証方法はインタビュー検証とMVP検証の2つがあります。
インタビュー検証では、実際のターゲットへのインタビューを通じて、ターゲットや課題の存在有無等を確認します。しかし、インタビューはインタビュアー・インタビューイー共にバイアスがかかってしまうため、インタビュー内容が正しいかを簡易的なソリューションであるMVPを用いて検証します。
仮説検証はリニアではなく、検証結果を踏まえアイディア(仮説)を再設計して、再度検証するという繰り返しの作業となります。仮説が想像とは異なり、苦しい時期もありますが、諦めず粘り強く検証を繰り返していきましょう!
まずインタビュー検証です。インタビュー検証では以下の4つを確認します。
・実際に想定しているターゲットが存在するのか?
・ターゲットは想定している既存手段を利用しているのか?
・そのターゲットは想定している課題を抱えているのか?
・その課題の解決にお金を払うのか?
インタビューにおいてまず注意したいことは、あなたが定義しているターゲットに対してインタビューすることです。前述のようにユーザーの属性・価値観によって課題の有無や深刻度は大きく異なります。
ターゲット以外のユーザーへインタビューをしても誤ったインサイトを知り、誤った検証となってしまいます。このため、インタビュー対象者はターゲットのみとしましょう。
次に注意したいことは、質問の仕方です。ダイレクトに「あなたはターゲットですか?この課題に悩んでいますか?お金を払いますか?」と聞いてもインタビューされた人は気を遣って、真実とは異なる回答をすることが往々にしてあります。
従って、まずは課題を感じている場面で本当に不満・不便を感じているかを質問します。この際にシチュエーションまで定義して質問することが重要です。以下の図のようにシチュエーションによって課題感は異なります。
普段の使い方を聞きながら、課題が存在するかどうかを探り、もし不満が存在する場合は「不満の要因は何か?」「既存手段では解決できないのか?」を深掘りします。逆に不満が存在しない場合は「どんな既存手段を使っているのか?」「既存手段に不満はないのか?」を深掘りしていきます。
このように既存手段に対する不便・不満を探りながら、以下のような質問でターゲットや既存手段に対する理解を深めていきます。
・ターゲットを知る(趣味や憧れの人物は?休日は何をしてるか?よく使うサービスは?)
・既存手段を知る(既存手段は何か?どこで知ったのか?他と比較して優れている点・劣っている点は?)
これらの質問を通じて、ターゲットのインサイトを知り、アイディアのブラッシュアップを図りますが、ここで注意すべきことは自分のアイディアに固執しないことです。
多くの人は、自分が考えたアイディアが優れたアイディアだと思い込み、愛着が湧き、否定的な意見を受け入れようとしなくなってしまう傾向にあります。成功を掴んだスタートアップも最初のアイディアから成功はしておらず、検証の繰り返しにより成功を掴んでいます。フラットにユーザーの声を聞くということを心がけていきましょう!
インタビューによりターゲット・既存手段・課題に対する理解が深めてきましたが、インタビューにはバイアスが存在するため、検証としての妥当性はありません。
そのため、MVP(MinimunViable Product)と呼ばれる実用最低限の機能を有するプロダクトを用いて、定量的に「課題が存在するか?」「その課題を解決する価値を提供できているか?」を検証します。
MVPは以下のような図で表現されることがありますが、MVPはプロダクトの一部を提供するのではなく、プロダクトの「価値」を最低限の機能で提供するプロダクトとなります。
たとえば、自動車というプロダクトを開発したい場合、タイヤというパーツから開発するのではなく、移動手段という最低限の「価値」から検証をはじめます。
MVPの目的は、「課題が存在するか?」「その課題を解決する価値を提供できているか?」を検証することですが、具体的に確認したい指標は以下3点となります。
①ニーズの有無
②継続の有無
③支払いの有無
①ニーズの有無
課題が存在していて、その課題を解決できているのであれば、MVPを喜んで使ってくれるユーザーがいるはずです。従って「購入者数・契約社数」や「CVR・受注率」がニーズの有無を図る指標となります。
②継続の有無
ニーズがあったとしても1回きりで不要と思われてしまうようであれば、ビジネスとしては成立しません。そのため「繰り返し利用してくれているか?」ということが重要になります。繰り返し利用してくれて初めて本当に課題解決ができているプロダクトであると言えます。継続の有無を測る指標としては「リテンションレート・チャーンレート」があります。
③支払いの有無
競合と比較して選ばれていることを証明するためには、無料ではなく対価を支払ってもらい、前提条件を同様にすることが必要です。たとえば、ゲームやユーティリティー系のアプリなど「無料だったら使うけど、有料なら使わない」というサービスも多く存在します。有料のプロダクトである場合は有料でも利用するかを確認します。支払いの有無を測る指標は「売上」となります。
それでは、実際にMVP検証はどのように行われているのでしょうか。いくつか有名な事例を紹介します。
このように必要最低限のプロダクトにより、ニーズの有無・継続の有無・支払いの有無を検証しています。ユーザーの属性・価値観によって課題の有無や深刻度は異なるため、MVP検証においてもインタビュー検証同様にターゲットに対して提供することが重要です。
30〜50人程度のターゲットユーザーのコミュニティ(FacebookグループやLINEグループ)を作り、MVPを利用してもらい検証〜フィードバックを得るというケースが多く見られます。
「スケールしないことをしろ」というY CombinatorのPaul Grahamの名言があります。
仮説検証と改善は地道な繰り返しが続く時間となりますが、スケールしないことをすることが、後々のプロダクトのスケールに大きく影響を与えます。この検証プロセスを疎かにせず、繰り返し利用されるMVPの実現を目指していきましょう!
インタビューとMVPを通じて仮説を検証〜改善を繰り返し、アイディアの成功に対する解像度が高くなってきたら、いよいよプロダクトの開発とリリースです。ここではプロダクトのリリース前とリリース後のTodoを紹介します。
リリース前は、リリース時にターゲットにリーチを最大化できるように主に以下アプローチの準備を行います。
①ターゲットが多く存在するコミュニティのリストアップ
オフラインの店舗やサークル、業界団体、オンラインの掲示板やコミュニティ、FBグループ、オープンチャットなどターゲットが多く存在するコミュニティをリストアップします。リリース後にこのようなコミュニティで告知やチラシ配布、イベント開催などができるよう事前の準備を行います。
②ターゲットにとって影響力あるインフルエンサーのリストアップ
ターゲットにとって影響力のあるYouTuberやインスタグラマー、ブロガー等をリストアップします。上記と同様ですが、リリース後にこのようなインフルエンサーの協力を得られるようにコミュニケーションを取り、製品やサービスを試してもらったり、アドバイスをもらいます。
③SNS上のターゲットのリストアップ
YouTubeやInstagram、Twitter、TikTok等でターゲットユーザーをリストアップ、DMで製品の案内やインタビューの協力を依頼します。リリース前から多くのターゲットユーザーとコミュニケーションを取ることで、プロダクト自体の解像度を高め、さらにリリースのタイミングで拡散にも協力していただけたりと大きな効果が期待できます。
④ソーシャルハック
ターゲットの利用率が高いSNSでアカウントを作成、ターゲットに有益な情報発信により、事前にターゲットフォロワーを集客します。リリース後の情報発信でフォロワーに認知してもらうと共にフォロワーの反応を踏まえてクリエイティブの検証〜改善を行うことで、プロダクトの価値訴求のメッセージ自体を最適化することができます。
⑤プレスリリース
リリースに向けてプレスリリースの原稿を作成、プロダクトの業種に適した媒体をリストアップ、事前に情報共有をしていきます。プレスリリースはリリースのお知らせだけでなく、ターゲットの関心を得られそうな調査レポートや新機能の実装、提携など定期的な発信を行っていきます。
リリース後はプロダクトの改善を繰り返し、熱狂的なファンに愛されるプロダクトへと磨き込んでいきます。愛されるプロダクトの最重要指標は「リテンションレート(継続率)」です。
リテンションレートが安定しないまま、マーケティング活動を始めると、新規ユーザーが訪れても離脱してしまうという機会損失が発生します。この状況は穴開きバケツと呼ばれ、バケツの穴を塞ぐこと(リテンションレートの安定化)が重要になります。
リテンションレートの安定化のためには、流入からコンバージョンまでのユーザー行動を分析して、改善を繰り返していきます。ユーザー分析とファネル分析の2種類が主流となっています。
ユーザー分析
属性別、アクション別、利用日数別等の様々な切り口で離脱率やリテンションレートを集計、リテンションレートが向上する行動を特定して、その行動を促すための機能追加やUIUXを改善したり、リテンションレートの低いユーザー層を特定して、インタビューを行い改善を図ります。
有名なエピソードとしてTwitterでは、初回登録の際にフォロー数が5人未満のユーザーの離脱率が高いという事実を発見、5人以上フォローしなければ利用不可の仕様へ変更することにより、リテンションレートの向上を実現したそうです。
ファネル分析
サイト訪問→会員登録→課金→再訪問のようなユーザー行動を定義、それぞれの行動に繋がる割合を集計、離脱率の高い行動を特定して、その行動が発生するページのUIUX・メッセージから離脱要因を推測、ABテストで最適化していきます。
リテンションレートが低いユーザーや離脱率の高いユーザーがターゲットではない場合、現段階では無視、ターゲットに集中で問題ないかと思います。
よく質問がありますが、リテンションレートの計測期間はプロダクトのジャンルによって異なります。たとえば、SNSやニュースサービスであれば、情報収集は毎日のように行うため、日次のリテンションレートを重視します。一方で飲食サービスであれば、毎日利用する人は少ないため、週次のリテンションレートを重視します。
同じくリテンションレートの評価基準は、同様の価値を提供している競合のリテンションレートが目安となります。競合のリテンションレートを知るためには、実際にそのサービスを運営している方に質問してみたり、海外の同様のサービスの実績を検索してみたり、試行錯誤する必要があります。どうしても情報を取得できない場合は、同様の頻度で利用されていると考えられる類似サービスのリテンションレートを参考にしてみるという方法もあります。
リリース後のプロセスとしてリテンションレートについて紹介しましたが、リテンションレートが安定した後はビジネスモデルの検証も重要です。自社のビジネスのCPA(1人あたりの顧客獲得費用)がLTV(1人当たりの顧客生涯価値)を上回っていないか、きちんと長期的に黒字になるモデルになっているのかもしっかりと検証していきましょう。
このようにプロダクトリリース後も多くの検証と改善を繰り返しながら、不確実性を一つずつ取り除き、事業成長を目指します。市場環境や競合環境は常に変化を続けるため、事業が続く限り検証と改善は半永久的に続きます。リリース後は、常にやらなければならないことが目の前にあり、大変な状況となりますが、4つの問いを忘れず、検証と改善を繰り返し事業成長を実現してきましょう!!
今回はスタートアップのアイディア構想からプロダクトのリリースまでのプロセスをまとめましたが、「より具体的な内容を知りたい」「自分のアイディアの場合、どう検証すれば良いのか?」「アイディアをブラッシュアップしたい」等あればお気軽にDMいただければと思います!
ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました!