近年急激に普及した生成AI、その火付け役となったChatGPTの公開から2年が経とうとしています。(ChatGPTは2022年11月30日公開)
コマース・リテール領域では、生成AIはチャットやクリエイティブ生成における活用が主流となっていますが、徐々に特定業務の支援を目的とするAIエージェントが生まれてきています。
これまでのコマース・リテール領域での生成AI活用といえば、TypefaceやJasperのような広告クリエイティブやSNS投稿の自動生成ソリューション、AttentiveやConnectly.aiのようなチャットソリューション、大手マーケットプレイスでのQ&Aや検索でのチャット利用が主な活用例となっていました。直近では、サプライチェーンマネジメント、仕入、FC管理をはじめ複雑な交渉が発生するB2Bコミュニケーション領域での活用例が増えてきています。
Cavelaは、2023年に設立された米国のスタートアップです。
製品の製造先の検索・選定から交渉、納品までを自動化するソリューションです。従来の製品製造におけるコミュニケーションを1000回から10回へ削減、約40%の製造コストを削減できるそうです。
20万社以上のサプライヤーが登録されており、自動で数百社のサプライヤーへ連絡、見積もりやサンプルを依頼し、自社にとって最適なサプライヤーを見つけることができます。翻訳も自動化されており、海外のサプライヤーとの交渉も容易になり、Pietraの進化版的なサービスとなっています。
Dideroも2023年に設立された米国のスタートアップです。
メーカーの製品製造における材料や部品の調達における調達先の選定、見積もりや社内の請求書管理、支払い、納品状況の進捗管理等を自動化するソリューションです。
サプライチェーンに関わる業務のうち86%は確認等の事務作業となっており、電子メールや社内システムとの連携により、サプライチェーンデータを構造化、自動化することで、これらの業務時間を削減しています。
Harmonyzeは2023年に設立された米国のスタートアップです。
フランチャイザーに対してフランチャイジーとの契約や規約、タスクの管理、支払い等の業務を自動化するソリューションです。
これまで手動で行われていたフランチャイジーの管理を自動化するとともに漏れなく期限通りに業務を促し、売上の向上を支援しています。導入企業では200以上のタスクをHarmonyzeを通じて自動化しているそうです。
Pactumは2019年に設立された米国のスタートアップです。
このコラムでも何度か取り上げていますが、小売企業と仕入先との交渉を自動化する小売企業向けソリューションを提供しています。
支払サイトに応じた割引額や解約条件等の譲歩条件を基に、利益を最大化するための業務を自動化しており、WalmartはPactumの導入により交渉の68%で平均3%の利益向上に繋がったと発表しています。
これらのソリューションは、AIエージェントとして従来の買い手と売り手の間の確認や交渉、提案という業務を効率化し、さらに学習により成果の最大化を目指しています。このようなソリューションは、多くのプロセスや交渉条件がある従来の技術では自動化しづらかった領域が対象となっています。
インターネットの世界では、買い手と売り手を繋ぐマーケットプレイスが、ネットワーク効果を通じて、その市場のシェアを大きく獲得する傾向にありますが、これらの領域は個々の調整に最適化がしづらく、マーケットプレイスが生まれづらい領域であったとも言えると思います。生成AIにより個々の取引の最適化が進めば、このような領域にも寡占的なマーケットプレイスが生まれる可能性があると感じます。
AIエージェントを起点としたマーケットプレイスを目指すスタートアップがあれば、ぜひお話しさせてください。
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